Profile
Artist Profile
知路 雅文
Masafumi Chiji
1976年、京都に生まれる。幼い頃から絵を描くことが好きで、紙と鉛筆さえあれば時間を忘れて没頭するような子どもだった。学校の授業では美術が最も得意であり、周囲の友人や教師からもその才能を認められていた。
大学進学後、美術を専門的に学ぶ道ではなく、より広い視野を持つために異なる分野を専攻。しかし、創作への情熱は変わらず、在学中に友人と共に開いた飲食店の壁に、自由な発想で壁画を描いたのがきっかけで「壁画アート」という表現方法に目覚める。この経験が、後のアーティスト活動の基盤となった。
大学卒業後、本場のストリートアートを学ぶために渡米。ニューヨークやロサンゼルスを巡り、街中の壁に描かれたアートや、現地のアーティストとの交流を通じて、多様なスタイルと技法を学ぶ。この旅は、彼にとってアートの概念を広げる貴重な体験となった。
しかし、帰国後まもなく難病指定の「再生不良性貧血」を発病。無菌室という隔離された空間での生活を余儀なくされる。激しい倦怠感や制約の多い環境の中でも、彼は筆を手放さなかった。絵を描くことが唯一の自己表現であり、生きる力となったからだ。半年間の入院生活を経て退院し、以前の店舗を再開。これまで以上に壁画制作に情熱を注ぎ、より多くの人々にアートを届けることを決意する。
2002年、初の個展を開催。この展示をきっかけに、店舗の壁画制作や、オーダーメイドのアート作品の依頼を受けるようになる。壁画だけにとどまらず、絵馬、看板、カスタムスニーカー、畳、電飾アートなど、さまざまな素材にアートを施す活動を展開。「人と人とのつながりこそがアートである」という信念のもと、多様なプロジェクトに参加し、独自のスタイルを確立していく。
これまでに手がけた作品は多岐にわたる。代表作には、海宝寺「若冲筆投げの間」襖絵『孔雀』、力の湯の壁画『富士』、大阪・樟葉モールの仮囲いアート、JR 名古屋高島屋の仮囲いアート『偉人』、成田空港の仮囲いアート『NARITA』、寺社仏閣の絵馬制作、宇治警察署のマスコットキャラクター制作などがある。これらの作品は、公共空間や商業施設、文化施設など、多くの人々の目に触れる場所に存在しており、アートを身近に感じてもらう機会を創出している。
2024年には、大阪と横浜で22年ぶりとなる個展を開催。これまでのキャリアの集大成ともいえる展示となり、多くの人々に自身の作品を見てもらう機会となった。同時に、アートの可能性をさらに広げるため、新たな表現方法にも挑戦している。
現在は、日本の伝統文化とアートの融合に取り組んでおり、「畳アート」に新たな可能性を見出している。畳という日本独自の素材をキャンバスに見立て、従来のアートとは異なる技法を模索。伝統と現代が融合する新しい表現として、国内外に発信していくことを目指している。
最終的な夢は「一コマ一コマが絵画作品のように美しい映画を創ること」。
アートを通じて多くの人々とつながり、新たな表現の世界を追求し続ける。創作の軌跡を積み重ねながら、常に進化し続けるアーティストでありたいと願う。